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国際的に業績を挙げた若い世代の研究者を表彰する「第19回中曽根康弘賞」の授賞式が11月29日、都内のホテルで行われた。優秀賞を受賞した認定NPO法人「テラ・ルネッサンス」理事長の小川真吾氏(48)は、アフリカのウガンダやコンゴ、ウクライナなど世界の紛争地で被害を受けている子供らの支援の実績、現状の情報発信が高く評価された。
現在もウガンダ北部で支援活動を行っている小川氏は、授賞式の会場にビデオメッセージを寄せ、「わたしがウガンダに来た2005年当時、北部では、紛争が続き、多くの子供が反政府軍に誘拐され、兵士にさせられていました。夜間のみ、子供たちを安全な場所に避難させ、多いときに1万人を超える子供がいました」「多くの方々が悲惨な避難生活を余儀なくされ、安全な水や食料、薬へのアクセスができず、日本では考えられない簡単な病気で命を落としてきました。死因の4分の1がマラリアの感染症で、0歳から5歳未満の多くの子供がで亡くなりました。わたしも10回ほどマラリアに感染しましたが、マラリアは予防もできますし、適切な治療があれば、亡くなる病気ではないのすが、栄養失調や日本円にして500円の薬が買えないないだけで、多くの命が失われました」と説明した。ウガンダに隣接するコンゴでは、今も紛争が続き700万人が避難を余儀なくされ、食糧援助、病気への啓発、医療所建設に力を入れているという。
小川氏は今後の支援について「食糧援助など緊急支援だけでなく、今後は仕事ができるような自立支援をハイブリッドで行っていきたい」「ないものを探すのではなく、現地にある資源や知恵を生かして、日本人らしい、きめ細かい支援を続けていきたい」と述べた。
奨励賞は、九州大学比較社会文化研究院准教授の相澤伸広氏(47)と、英オックスフォード大学講師のジュリオ・プリエセ氏(40)=イタリア国籍=が受賞した。
相澤氏は、インネシアの若手専門家として同国の対外政策を総合的に論じ、東南アジア全般の国際関係を対外的に発信したことが評価された。相澤氏は授賞式のスピーチで、インドネシアの華僑や軍人に信頼されることの苦労を明かし、「東南アジアの人のような頭、視点で世界をみることを深く学び、文化、言語、歴史、芸術もすべてを吸収することに情熱を傾けてきました」と話した。
プリエセ氏は、日本外交の研究者としてイギリスなどヨーロッパで活躍し、当地で日本外交の研究水準の向上に貢献したことが受賞理由となった。プリセス氏は、緊張が続く日本と中国の関係について、「日本政府がなすべきことは、中国との実質的な対話により、信頼関係を深める土台を築くこと。積極的な外交により、日米中の緊張関係も緩和でき、日中衝突も回避できる」と訴えた。
授賞式では、同賞を主宰する「中曽平和研究所」会長、麻生太郎自民党副総裁が「ロシアのウクライナ侵攻、中国の拡張主義など、世界は今、大きな転換期を迎えています。当研究会の活動の重要性が増しており、官・民・学と連携しながら、当研究会ならではの提言を積極的に行っていきたい」と話した。
中曽根平和研究所は、多くの分野で国際的な業績を挙げている若手研究者を対象にした中曽根康弘賞を募集している。